「はい? 今なんと?」


いや、本当は聞こえたけど、私達の声は周りに気を遣って小さめに話してるせいで、聞こえた言葉が真実かどうか定かではなかった。


「だから嘘じゃねーんだろ」

「信じるの?」


こんな話を?


「なんだよ、嘘なのかよ」

「いや、違うけど」


でも私でも変だと思ってるわけで、もしケンにただの夢だろってつっぱねられたらそりゃそうなんだけどって口ごもるしかないと思ってた。


「お前って目に見えるものか体験した事あるものしか信じねータイプだろ。なのにこんな真剣になってるって事は嘘じゃないって事だろ? そもそもバカバカしいだけの夢だったらお前がここまで気にするはずもねーしな……って、なにアホ面してんだよ」


あんぐりと口を開けっぱなしだったことに気がついて、慌てて口を閉じた。


「それで、その夢の内容とやらをちゃんと話してみろよ。それでやっぱりお前が考えすぎだと思ったら、靴買って学校に行けばいいし。ってか俺的にはもう家に帰りてーけどな」


ケンはちらりとパソコンに目を向けたけど、それに触れる様子もなく私が再び話し出すのを待っていた。


「わかった。じゃあちょっと思い出しながらになるかもしれないけど、とりあえず一つ目の夢から話すから聞いて」


そう言って私はゆっくりと記憶を紐解くようにして、話を始めた。


初めの夢で覚えている事は靴紐が切れるところと、あのおじさんがその時に助けてくれた事。あとは次の夢で見たのと同じような会話をしていた事。あと、なぜかケンと自転車に乗ってた時にトラックに轢かれる事故にあった事。

そのトラックを運転していたのは、あの靴紐が切れた時に助けてくれたおじさんだった事。

2つ目に見た夢は記憶に少しおぼろげなところがあるけれど、1つ目の夢よりは記憶が確かという事。また同じく靴紐が切れておじさんに助けてもらった事と怪我をしたことりちゃんを駅まで送った時、事故にあった事。そしてことりちゃんが轢かれた事。それらを覚えている限り事細かにケンに話した。

最後にこう締めくくって。


「私が見た夢の2つともが同じ日、9月26日だった」