「似た光景だったり、実際にした会話だったり……それが全部現実でも起きるの」


ケンと今朝した会話や、お母さんとの会話。それに靴……私は暗がりの中で自分の惨めな姿になったローファーに視線を落とした。


「ケンがさっき言ってたあのおじさんも、夢の中で見た人だった。私が見た夢で、その2回とも私はあの人に会ってるの」

「それってお前が気づいてなかっただけで、夢を見る前にあのおっさんと道端で会ってたんじゃねーの?」


私は思わず小さく笑った。だってこれも今朝の夢の中のケンが言ってた言葉だったから。


「私もそう思うけど、あまりにも同じすぎるんだよ」


これ以上どう言えば良いのかわからない。そもそも信じてもらえる保証もないめちゃくちゃな夢の話だから。


「まぁ、信じてもらえるとも思ってなかったからいいんだけど……」


私がそう言って、テーブルの脇に寄せていたドリンクに再び手を伸ばした瞬間、ケンはこう言った。


「まぁ、普通に考えたらこんなもん考えすぎか、偶然が重なっただけでそんな夢なんかを真剣に捉える方がおかしいとは思うけどな」


だよね、やっぱそう思うのが普通だよね。

私は未だに炭酸がしゅわしゅわと元気に弾けているジュースを一口飲んだ。


「でもまぁ、信じてるよ」


ドリンクがゴクリと喉を通る音が邪魔をして、私はケンの言葉を聞き取れなかった。