「で、もったいぶってなんなんだよ」


私達は一番安いオープン席の角の席を隣同士で借りた。ネカフェは平日だと言うのに、意外と人が多くてびっくりした。個室に関してはいびきが店内にこだまするくらい深い眠りに陥ってるおじさんもいるらしく、それにも衝撃だった。

朝のこんなに早くにネカフェに来たことなんてなかったから知らなかったけど、ネカフェを住まいにしてる人って本当にいるんだな、って実感した。


「夢がどうとか言ってたよな」


私はフリードリンクで取って来たメロンジュースを一口飲んだ。自分が思っていたよりも喉が渇いていたらしく、グビグビと飲みたいところだけど強めの炭酸が私の口の中で弾けて一度にたくさんの量を飲むのは難しそうだ。

それは炭酸飲料なんて持ってくるんじゃなかったと後悔するくらいの強炭酸だった。私は一旦ドリンクをテーブルの脇へ押しやって、ケンと見合った。


「笑ったりしないって約束できる?」

「内容によるだろ」


じゃあダメじゃん、こんな話ケンが信じるとは思えない。ってそう思う反面、ケンは真剣な様子で私の話を聞こうとしているのが伝わるし、こんな風に前置きをしてる割に私ももう話す決心を決めていた。だから私は静かに話を繋いだ。


「私だってこんなバカバカしいこと信じられないんだけどさ、2回続けて同じ夢を見たの。それも良い夢なんかじゃなくって悪い方の夢で、1回目は私トラックに轢かれて死ぬんだ。で昨日見た夢はことりちゃんが轢かれた」

「でも夢だろ、それ」

「私だってもちろんそう思ったけど、ただの夢じゃないんだってば。夢で見た光景が現実にも起きてるの」


私はそう言って、記憶に引っ張られるような感覚で自分がトラックに轢かれるシーン、ことりちゃんが倒れているシーンが脳裏に浮かんで目を伏せた。