「とりあえずコンビニで時間潰すか? もしくはネカフェ行ってもいいけど、ネカフェだと下手したら補導員がいるかも知んねーし」

「確かに、でも駅から離れたところにあるネカフェだったら大丈夫じゃない?」


私達は普段サボったりしないくせに、友達の情報網から学校をサボってカラオケに行ったとしても補導員が来ない場所を知ってる。それを教えてくれた友達が以前言ってたネカフェが学校からそんなに遠くないところにある。きっとそこならいけるはず。


「店開くのって早くて10時とかでしょ? コンビニ2時間はきついし、かと言ってこの靴で歩き回りたくもないからネカフェ行ってみようよ」


そう言うと、ケンも頷いた。ネカフェだったらゲームもできるし、動画もみれる。ケンにとって最高の場所だ。

私もケンの家よりネカフェなら賛成だった。だってネカフェだったらマンガだってあるし、時間を有意義につぶせる。


「でさ、話戻るけど、お前あのおっさんと知り合いだったのかよ?」

「おっさんって、あの今朝会った人のことだよね……?」


ネカフェまで行く途中の道のりで、ケンがふと思い出したように話題はあのおじさんに戻った。

ちょうど私もあの人のことを考えていただけに、一瞬声に出していたのだろうかとドキッとしてしまった。


『どうして逃げたんだ……?』


そう呟いた言葉は私に問いかけたと言うよりも、独り言のようだった。あの男性と距離が近かったせいで聞こえたその言葉が今も私の耳の奥で反芻している。


「あんな人、知らないよ。知るわけないじゃん」


何度自分に問いかけても出ない答え。あの人が誰なのか、私だって知りたい。