「むしろそうだとしたらケンこそあの人に見覚えないの? 今朝の話だけじゃなくって、以前にどこかで見たって覚えある?」


私達はほぼ毎日一緒に登下校してるから、私が見たことある人ならケンだって知ってるはずだ。


「知らねーよ。俺周りの景色なんかキョーミねーし」

「景色というかあんたは歩きスマホするのやめなよね。あれ危ないんだから」

「してねーじゃん。たまにしか」

「たまにもダメなんだってケンママにも言われてるでしょーが」


そうだった、そもそもケンは周りの景色にも人にも興味ない人だった。全く話にならない。


「二人ともどうかしたの?」


あまりにも私とケンがコソコソ話してたせいで、ことりちゃんは不思議そうな顔で覗き込んできた。背の低いことりちゃんは私とケンに挟まれるような立ち位置で首を傾げてる。


「今朝学校来る前に道端で会ったおじさんがまたいたの」

「そうなんだ、それってすごい偶然だね」

「だよね、私もそう思う」


ほらやっぱり偶然って思うのが普通だよね。ケンは時々考えすぎなところがあるから。普段はリアリストなくせしてゲームのしすぎなのか、脳みそが時々SFチックなんだよね。

私はことりちゃんにつられて笑った瞬間、綿毛のようにふわふわとした笑顔の天使が今度はニヤリとほくそ笑みながら話を続けた。


「もしくはその人カヨちゃんのストーカーだったりしてー?」


冗談めかした表情でそう言うけど、ことりちゃんの言葉を聞いたケンは、再び真剣に考え込むような顔を見せた。