太陽がまだ高い位置にある夕方。夕日がそろそろ辺りを朱に染めてもいいくらいなのに、まだ日は高い位置に力強く君臨している。

そのせいか、私はケンの目が指し示す方向をなかなか見る事が出来ないでいた。だってそこはちょうど太陽がバックに神々しくも輝いているところだ。私はスッと目を細めて、じっくりとその位置を確認した。


ーーあっ。


ケンのちょうど肩先から覗く顔、それは今朝横断歩道で会ったあのおじさん。そして、今朝の夢で見た人だった。

秋とはいえ日中は特に気温が高いというのに、見ているだけで体温が上がりそうなほどむさ苦しい無精髭と長い髪。私が露骨に見すぎていたせいか、おじさんは物陰に隠れるようにして、角を曲がっていった。


「あいつ、さっきから俺達と同じ方向をずっと歩いてた」

「えっ、そうなの?」


私が純粋に疑問を口にした間も、ケンは怪訝そうな顔であのおじさんが曲がった先を見てる。


「胡散臭いと思わねー? 俺らが学校を出たあたりからずっとだぞ?」

「でも偶然同じ方向だったんじゃない?」


純粋に疑問を口にしたにも関わらず、私は自分の言葉に違和感を覚えた。

ケンがどうしてこんなに怪訝そうな顔をしているのか。それにケンは言った、私達が学校を出たあたりからずっと同じ方向を歩いてたらしい。

学校を出てから少なくとも10分は経ってる。ことりちゃんの歩調に合わせてゆっくり歩いてるとはいえ、ずっと同じ方向なのはちょっと胡散臭いと感じても仕方がないと思う。