「でも、何にしても靴紐は買って帰った方がいいね。そのままだとあたしみたいになるかもしれないよー。あはっ」


そう言ってことりちゃんは自分の膝を指差した。今も痛々しく包帯が巻かれた足はまだ引きずるようにぴょこぴょこしてる。

私はまたその様子を見て……というかことりちゃんにそんな風に言われて一瞬何か違和感というか、既視感を覚えた。


なんだろ、この変な感じ。何か思い出せそうで、思い出せない。知ってるようで、知らない。もう少しでそれに手が届きそうで、届かないーーそんな感じがした。

これもデジャヴになるのかな。でも今朝の出来事のように確実な記憶がない。

ただ、この状態をどこか知ってる気がするっていうだけ。


「カヨちゃん、どうかした?」

「えっ、あ、うん。なんでもないよ。昨日あんまりよく寝れなかったからちょっとぼーっとしちゃった」


風に靡いた髪を手櫛でとかしながら、私はあははっ、と誤魔化すように笑った。


「ってかケン、ケンこそどうかしたの?」


話題を変えようと私達の後ろからことりちゃんの荷物を持ってついて来てるケンに目をやると、怪訝そうに眉根にシワを寄せたケンが背後をチラチラと見てた。


「あんたまさか、まだ機嫌悪いの? 荷物持つくらいでそんなに怒ることないじゃん。それなら私がここからは持つし」


肝の小さい奴だな。いつからそんなちっさい奴になったんだ。ってか私が今朝怒ってた時は生理前だのなんだの言ってうるさかったクセに……なんて思って、ケンが肩から下げるようにして持っていたことりちゃんのリュックを掴んだその時だった。


「カヨ、あいつって今朝会った男じゃね?」


耳打ちするようにそう言ったケンの言葉。思わずケンと目を合わせた瞬間、ケンは目線でその相手の位置を知らせた。