「子供の頃に体操習ってたけど、それももう何年も前に辞めちゃってるし、今は普通だよー」

「でもことりちゃん中学の時陸上部にいたって言ってなかったっけ? なんで高校では帰宅部なの?」


体操もできて走りも早い。その上可愛いときたらパーフェクトじゃないか。


「だって、毎日部活ばっかりだし、肌は真っ黒になるもん。あたし、白い肌に憧れてるんだぁー」

「今でも十分白いと思うけど?」

「カヨちゃんの方が白いじゃんー。それに部活したらもっと黒くなっちゃうんだよー」

「じゃあ室内の部活にするとか?」

「運動部はもういいの。筋肉質にもなっちゃうし可愛くないもん」


ことりちゃんはそう言いながら愛らしい口を膨らませ、今にも噴火しそうな山を作った。


「それにね、あたし高校に入ったら彼氏作りたいって思ってたの。部活しちゃうと時間もそっちに使うことになるし、可愛くなくなるから……」


そう言って今度は頬を緩ませながらほんのり顔を赤らめた。


「ことりちゃん、可愛い……」


思わず溢れた言葉にハッとして、ことりちゃんを見るとことりちゃんは相変わらず足を引きずるようにして歩きながら照れていた。


本当に可愛いと思う。ことりちゃんはこう言うけど今も昔も絶対モテたと思う。だけど、ことりちゃんが好きになるタイプってどんな人なんだろう。


「あっ、本鈴だ。あたしに構わずカヨちゃんは先に行って、授業に遅れちゃう」

「いいよいいよ、遅れても。それにことりちゃんの怪我を説明したらきっと先生も許してくれるし。ってか次の授業ってなんだっけ?」

「えーっと、歴史だった気がする」

「じゃあ尚更いいよ。私過去は振り返らないタイプだから」

「あはっ、カヨちゃんらしい言葉だねー」


ことりちゃんがクスクスと笑っている間に、本鈴のチャイムは鳴り止んだ。