ケンは先に教室に戻って、私は更衣室で着替えることりちゃんを手伝うつもりでついてきた。着替えも大変かと思ったからそう申し出たのに、ことりちゃんにあっさり拒否されてしまったから、せめて教室に帰るまでは付き合おうと思って入り口付近で待機中。

もうすでにクラスの女子は教室に戻ったみたい。と言うことは、ケンはみんながいる中着替えるハメになってるはず。

まぁ、男子だしいいでしょ。そう思って私は心の中でザマーミロとほくそ笑んだ。


「大久保くんって優しいよね」

「えっ、ケン?」

「他に大久保って苗字の人はいないでしょ?」


ことりちゃんはケラケラと屈託なく笑った。それにつられて私も笑った。


「私の知ってる大久保って苗字のやつはとても口が悪いけどね」

「それはカヨちゃんに対してだけでしょー。二人は仲良しだもんね」

「腐れ縁って言ってよ。まぁでも、普段はあんなやつだからあいつあんまり友達いないし、勘違いされやすいけど、良い奴だよ。ってか、そうじゃなかったら私はケンと一緒にいないしね。一緒にいるってことはいいやつってことなんだよ」

「そっか。それ、わかりやすくていいね」

「でしょ? ってかあれかな、私が一緒にいるからケンは良い奴なんじゃない? 私って良い人だから」


ことりちゃんは名前の通り小鳥がさえずるようにクスクスと笑った。私とは違って、小さくてふわふわと綿菓子みたいな可愛いことりちゃん。私はことりちゃんのようにはなれないけれど、一緒にいると自分も同じような人種になれてる気がするから不思議だ。