「お前、今体力テスト逃れれてラッキーとか思ってるだろ」


ケンが目を細めて私をじっと見てる。まるで私を尋問でもするかのような表情だ。


「まさか。私の体力がどれくらいついたか確認できるチャンスだったのに残念だなって思ってたところだったんだけど?」


鼻息荒くそう言うと、ケンの目はさらに細まった。

大して大きくもない目の持ち主なんだから、そんなに細めたら目がなくなるわよ。なんて心の中でほくそ笑んでいた時、私のそばにいる天使が、悪魔のような一言を放った。


「大丈夫だよカヨちゃん。今日休んだ人は来週するはずだからー」

「えっ! そうなの!?」


なんて余計なことを。一度だけでいいじゃん。一回免れたのならそのまま逃れさせてよ。


「あっはっはっはっ! ほらみろ、ラッキーって思ってたじゃねーかよ」


ケンが珍しくお腹抱えて笑ってる。しかも失礼にも私に人差し指を突き差しながら。


「ちょっと勝手にツボに入んないでくれる?」

「だってお前、さっきの驚いた顔ったらなかったぞ」

「人の不幸を〜!」

「ほらな、やっぱりカヨは体力テスト受けたくなかったんじゃねーかよ」


うぐっ……。私はこれ以上何もいえなくて、口を静かにつぐんだ。


「さぁ二人とも話は終わった? 大久保くんは教室で着替えないといけないんじゃない? 早く教室に戻りなさい。あと柊さんはどうする? 打撲だから湿布は貼ってるけど、かなり腫れてるから痛むなら少し休んでいってもいいわよ」

「いえ、あたしも教室に戻ります」

「そう、じゃあ二人とも柊さんを更衣室まで付き添ってあげてね」


私がことりちゃんの腕を掴もうとしたら、ケンがことりちゃんの腕をぎゅっと掴んで立ち上がらせた。


「柊、歩けるか?」

「うん、ありがとう。包帯してもらったからさっきよりマシみたい」


ことりちゃんは私の一番仲がいい友達だから、毎日一緒にいるケンとも自ずと仲が良い。いや、仲が良いとは言い難いけど、社交性のないケンに言わせたらかなり仲が良い方だと思う。