「種田さん、体調はどう?」

「かなり良くなりました」


なんて、嘘だ。全く一睡もできなかったし、頭の中は夢のことでいっぱいだった。特にあのトラックにひかれる瞬間、あの光景だけが頭に焼き付いて離れない。


「そう、それなら良かったわ。今大久保くんが迎えに来てるわよ」

「ケンが?」


わざわざ迎えにまで来なくてもいいのに。


「クラスメイトの子が転んで怪我をしたから付き添ったついでに来てるのよ、種田さんも戻れそうなら一緒に戻りなさい」

「クラスメイトの付き添い?」


それはまた珍しい。いくらクラスメイトとはいえ、あまり社交的じゃないケンが付き添う相手って誰だろう。

そう思って先生の後から医務室に入ると、丸椅子にちょこんと座っていたのは、クラスで一番の仲良しであることりちゃんだった。


「えっ、ことりちゃんが転ぶなんてどうしたの?!」

「えへへっ、気合い入れすぎちゃったみたい」


ことりちゃんの小さな膝に包帯が巻かれていた。運動能力は高いけれど、見た目で言えばか弱そうな守ってあげたい系女子なことりちゃん。だからこそ、その包帯は余計に痛々しく見せていた。


「でも二人ともなんで体操着着てんの? 一時間目って体育だったっけ?」

「違うよー、今日は体力テストだったんだよ。先週先生が言ってたでしょ? 覚えてなかったの?」


全く忘れてた。ってか、保健室にいたおかげで免れてラッキー。