「言霊っていう言葉があるように、言葉は時に本当になることがあるの。だから悪いことや不吉なことは言わない方がいいのよ」


言霊。その言葉にはとても聞き覚えがある。


「先生、私たちってそんな話を最近したか覚えてますか?」

「あら、したかしら?」

「いえ、したかなーって思っただけで、してないかもしれないんですけど……」


自分で言っておいてなんてバカみたいな説明なんだろう。恥ずかしさから少しずつ冷静さを取りもどして来たら、今度は一気に私の頭の悪さが浮き彫りになってしまったのを痛感して、下げた顔を上げれなくなってしまった。


「先生は正夢って信じますか」

「正夢?」


さっきから変な事ばかり言ってるのに、先生は変な顔を一切せず、私に真っ直ぐ向き合った。


「今朝からずっと変なんです。変な夢は見るし、それに夢で見た事と同じような事が起きるんです」

「例えば、どういう事があったの?」

「例えば、この靴紐が切れる事も夢の中で見た光景たったり……」


トラックに轢かれる話をしようとしたけど、言う寸前でやめた。先生が言ってたように言霊というのが本当にあるのなら……言霊を信じてるわけじゃないけど、なんとなく私は口をつぐんだ。