「佳代子、いつまでシャワー浴びてるの。学校に遅刻するでしょ、早くしなさい! ケンちゃんも待ってくれてるのよ」


私が髪を乾かしている時にキッチンからお母さんが叫ぶ声が聞こえて、私は負けじと叫び返した。


「もうすぐ終わるってば、ケンには先に行くように言ってよ!」


大体待っててなんて言ってないし。小学生じゃあるまいしさ、さっさと行けばよくない? お母さんは何かとケンの味方だからなぁ。

ドライヤーの熱を帯びて、私の髪は熱いくらい温かい。だけど私の体の中はこの髪よりも怒りの熱で帯びていた。


「あー、ダメダメ。朝からこんなことでイライラするとか、生理前なのかな」


前回いつだったのかを頭の中で計算をしながら、私はキッチンへと向かった。


「やっと終わったのかよ」


キッチンの入り口を開けてすぐ、ケンと目が合った。お母さんは遅刻するとか言って私には怒ってたくせに、ケンには優雅にも朝食を振舞っていた。

優雅といってもトーストと目玉焼き、ウインナーとコーヒーといういたって普通の朝食だけど。


「そういうあんたはまだ朝ごはん食べてんの?」

「カヨが食べなさそうだったから代わりに食べてやってたんだろ」

「えっ、それ私のじゃん!」


突然お腹がギュと引き締まるのを感じて、すかさずケンの向かいに座ってテレビを見ていたお母さんへと視線を向けた。

それはもうここぞとばかりに恨めしい形相で。


「時間もないのに佳代子がシャワー浴びてたからでしょ」


こちらを見ようともせず、お母さんはテレビを見ながら笑ってそう言った。


「ひどっ! 娘が飢え死にしてもいいの!?」

「大げさねぇ、一食抜いただけでしょ。それに佳代子、普段からあまり朝は食べないじゃない」

「いつも私のご飯をケンにもあげるからでしょ」


単純に私の取り分が少ないっていうだけの話じゃん。

今度はケンに恨めしい顔を向けた。すると、ケンは両手を顔の前で合わせて「ごちそうさまでした」と頭を少し下げた。