「……かはっ!」


大きく息を吸い込み、そのあとに大きく咽せた。


「ゲホッ、うえっ、気持ち悪っ……」


私は汗だくになってベッドから飛び起きていた。


「あれ……?」


頭がなんだかクラクラする。寝起きだからかもしれない、脳がまだ起きてなくて、ぼんやりしてる感じだ。


「なんだ、夢だったのか」


嫌な夢を見たな……トラックに引かれて死ぬ夢なんて。

夢はたいてい目が覚めたら忘れてる事が多いのに珍しいな、なんて思いながら、珍しさついでに夢の内容を思い返していた。


でもなんで私、トラックに引かれる事になったんだっけ?


覚えている事といえば、青信号に突っ込んできたトラックが私を跳ねたという事。そのトラックの車種も、周りの景色も霧がかかったみたいにおぼろげで、思い出そうとすればするほどどんどん記憶は色を失っていく。


「佳代子、いつまで寝てるの。とっくにケンちゃんが迎えに来てるわよー」


お母さんがそう叫ぶ声が扉の向こう側から聞こえて、思わず時計を見やった。


「やばっ、もうそんな時間なんだ!」


私は夢の事なんてどうでも良くなって、慌てて棚から着替えを掴んで部屋を飛び出した。


「お母さーん! ケンにシャワー浴びるから先に行ってって伝えてー」


私はそう叫ぶとともに、お風呂場へと向かった。けど、ケンはお風呂場へと続く洗面所の扉の前で待ち伏せしていた。


「お前、そう言うことは早めに言えよな。メッセージ送ったら一発だろうが」

「いや、だから打つ暇ないくらい急いでたんじゃん」

「はぁ、お前なぁ……もういいからとりあえず入ってこいよ」


諦めたみたいにケンは洗面所から離れて、お母さんがいるキッチンへと向かった。