「大久保くんって優しいよね」

「口悪いけどね」


優しいのは認める。ぶっきらぼうだから冷たいヤツだとか勘違いされることもあるけど、実際はとても優しいヤツなんだ。私は付き合いが長いし、兄弟のように接して来たからよく分かる。

腐れ縁とも言える付き合いは伊達じゃない。もちろんこんな事本人の前では言わないけど。


「あたしにも大久保くんみたいな幼馴染いたら良かったのになぁ」

「そんなに欲しけりゃあげるよ」

「あはっ、そんなこと言ったら大久保くんまた怒っちゃうよー」

「大丈夫、大丈夫。あいつもいい加減私に愛想尽かしてるからことりちゃんみたいな可愛い幼馴染いたらテンション上がっちゃうだろうね」


だけど、それはそれで癪だな。それなら私もかっこいい幼馴染をもらわないと割りに合わない。


「そんなことないよー。きっと大久保くんはカヨちゃんと幼馴染でいることを選ぶと思うよ。って、ほらカヨちゃん早く行かないと大久保くんが戸口の前で待ってるよー」

「あっ、やばっ、あいつちょっとイライラしてきてる」


今朝も待たせたし……ってか今朝は一言も待てとは言ってないけど、今日2度目だからかイライラしてる。朝はまだいいけど、今はさっさと用を済ませて家でゲームしたいんだろうな。


「えっ、そうかな? 大久保くんいつもと変わんないよ?」

「確実にイライラし始めてる。片方の頬をやたらと膨らませたりへこませたりしてるでしょ? あれ、ケン的には貧乏ゆすりと同じ発想でイライラを誤魔化そうとしてる時によくするの」


ことりちゃんは目をまん丸と見開いて、ぽかんと口を開けた。


「へー、表情はいつもと変わらないから全然分かんないね。ってかカヨちゃんよく分かってるね、大久保くんの事」

「無駄に付き合いだけは長い腐れ縁だからね。じゃ、ことりちゃんまた明日!」


駆け出したいところだけど、足がジンジンと痛むからなるべく競歩でケンのいる場所まで向かった。