その後の授業には全く身が入らなかった。膝は相変わらずジンジンするし、膝の痛みに誤魔化されてるけど、顎だってなかなかの痛みを放っている。


「やっと終わったー。いつになく長い一日だった」


授業が終わるチャイムが鳴るとともに、クラスメイトはそそくさと帰宅の準備を始めている。


「カヨちゃん、病院行くの? あたし付き合うよ」


ことりちゃんは心配そうな顔をしながら、リュックを握りしめて私の元までやって来てくれた。そのことりちゃんが眉尻を下げて心配そうにしてくれる表情が、何より私を癒してくれる。


「ことりちゃんありがと。その気持ちだけで十分だよ。でもとりあえず病院には行っとこうと思う。家に湿布とかも無いし」


ことりちゃんがまだ何か言いたそうにしてる横から、ケンが私の机にかけてあるリュックを掴んだ。


「病院行くんだろ。さっさと行くぞ」

「あれ、付き合わないんじゃなかったっけ?」

「カズマに自転車借りといたけど、やっぱいらねーつって返すか」


カズマとははケンと仲が良い友達で、一年の時に同じクラスだったらしく、今でもケンがつるむ数少ない友達だ。


「さっすが、気が効くね! よっ、未来の大統領! デキる奴だと知ってたけど、ここまで気が効くなんて知らなかったよ。驚きすぎてひっくり返ってそのまま三回転くらいしちゃいそって、あいたっ!」


これでもか、というくらい褒めちぎったのに肩をグーで殴られた。もちろん軽くだけど。


「ほら、さっさと行くぞ」


ケンは私の腕を掴んで立ち上がらせた後、私の荷物を持ったまま教室を後にした。