「えっ! なんか凄いことになってるね。その顎も痛そうだし……」

「なんせ見事な転けっぷりを披露したからね」


誇らしげに言ってみたけど、ことりちゃんはとても深刻な顔で私の膝をまじまじと見つめている。


「結構腫れてるんじゃない? 保健室行く前の地点ですでに痣すごかったよね」

「うん、歩けるから骨折はないだろうけど、一応病院で診てもらった方がいいって先生も言ってた」

「そっかぁ、帰り病院までつき添おうか? その足一人で行くのは大変でしょ?」

「大丈夫だよ。これくらいどって事ないから」


なんて思わず虚勢を張ったものの、座ってるだけなのに膝がギュッ、ギュッ、と締め付けられるような痛みに私は思わず顔を顰めそうになった。


「そっか、分かった。でも無理しないで、何かあったら言ってね」

「ありがと、ことりちゃん。愛してる!」


可愛い子に心配されるなんてなんて罪作りな私。どさくさに紛れてことりちゃんをぎゅっと抱きしめた。


「でも大丈夫、大丈夫。それに、多分ケンもついてくるだろうし」

「俺、ついて行くなんて一言も言ってないけど」

「って言いながらついてくるじゃん。性格の悪い弟よ」

「誰が性格の悪い弟だ。お前を姉だと思った事一度もないからな。ってか誕生日だったら俺の方が先だし」

「誕生日が先って、あんた私と同じ誕生日でしょうが」

「生まれた時間は俺の方が先だっただろ」

「たった1時間差の話でしょーが!」


わざわざそんな誤差まで言うなんて子供か。しかもケンの両親は生まれた時間に関してあやふやだったし、そもそもその誤差も合ってるのか怪しいくらいだというのに。

大体どう考えてもケンの方が年上だとも、兄だとも思えない。むしろそう考える事自体が癪だと私は思った。


「あははっ、本当に仲良いね。羨ましいなぁ。私もこんな幼馴染欲しかったなぁ」


ことりちゃんはそうやってホワホワとした笑顔を見せてるけど、私達は本気なんだけど。ケンは私の弟で兄では決してないし、かと言ってケンもそう思ってるに違いないから、この話は一生平行線を辿るんだろうな。