「大久保くんのいう通り、不吉な事言わない方がいいわよ」


私は転んだ時に、膝を思いっきり打ち付けて、痣ができている。挙句に何よりダサいのは顎も打ち付けたせいで、顎の先も真っ赤だ。

保健医の先生が膝には湿布を貼って、外れないように包帯を巻いてくれてるけど、先生は現在私の顎にも湿布とガーゼを貼ってくれている。鏡はまだ見てないけど、ガーゼを貼られた後の自分の顔のダサさを想像してまた泣きそうになった。


「言霊っていう言葉があるように、言葉は時に本当になることがあるの。だから悪いことや不吉なことは言わない方がいいのよ」

「先生は言霊を信じてるんですか?」


言霊だとかオバケだとか、そういった類のものは私は信じていない。自分で言うのもなんだけど、私は単純な性格だから、目に見えるものしか信じない。

オバケなんて見たこともないし、ラップ現象とやらも聞いたことがない。だから私は信じていない。


「信じるか信じないか、と言うよりも、もしも本当にそういうことがあったとしたら、って考えるだけよ。先生はどちらかといえば本当にそういうことがもしあるとすれば、それは避けたいなっていう考えなだけ。だから種田さんの質問に関してはイエスとも言えるし、ノーとも言えるわね」

「なるほど」


それは私の考えにはなかったな。


「私は目に見えるものしか信じないので、“もしも”っていうその発想が少し面倒に感じてしまいますね」

「はははっ、種田さんらしいわね」


だってそれって、ありもしないものをわざわざ想像して避けるってことでしょ? 無駄に頭使ってる感じがして面倒くさいって思えてしまう。