「痛ったー!」


保健室。私は大人気なく叫んでしまった。でもそれくらい我慢できない痛みが私を襲ってくる。


「うっせーな、喚くなよ」

「あんたねぇ、うるさいと思うんだったらさっさと教室にもどんなさいよ」


私はケンに噛みつきながらも奥歯を噛み締めた。


「ほらほらケンカばかりしてないで、大久保くんは先に教室に戻って種田さんが保健室にいることを先生に伝えてきなさい。男子は教室で着替えなんでしょう? 早くしないと次の授業が始まってしまうわよ。それに種田さんも大久保くんにここまで連れてきてもらってるんだからそんな言い方しないの」

「はーい」


素直に返事をしたものの、正直ケンのことはどうでもよくて、自分の膝を見て涙を堪えた。

シャトルランをしている最中に、体育館シューズの靴紐が切れて、その衝動で見事に転んだ。それはそれは見事に、前のめりに転んだ。こんな転び方をしたのは小学生以来じゃないだろうか。

そもそも靴紐が1日の間で2回も切れることってある? 私の過去の人生で1度も靴紐が切れたことなんてないのに、それが同じ日に2回も起きる?


「靴紐が切れるなんてこと、本当にあるんですね。しかも今日これで2度目なんですけど」

「あら、そうなの? それはすごいわね」

「私今日死ぬかもしれません、あたっ!」


私がそういったら、ちょうど保健室を出ていこうとしていたケンが私の頭にチョップを食らわせた。


「なにすんのさ!」

「不吉な事言ってんじゃねーよ、バーカ」

「バカとはなによ、バカとは!」


ケンは私の返答にはなにも言わず、そのまま保健室を出ていった。