「でもさ、私達今より少し若かったのよ。ハイスクールくらいかなぁ。しかもなんか景色がものすごく古いし、名前も違う呼び名で呼び合ってたし」

「ふーん」

「それに私達、付き合ってもなかったよ」


あの様子だとまだ、と言う言葉を付け足した方がいいのかもしれないけど。

幼馴染のまま、私達はとても近い距離にいた。私はハルに家族以外の感情を抱く前に夢は終わってしまった。


「まぁ、夢だろそれ。夢なんてそんなもんだろ」


ハルは椅子を前後にゆらゆら揺らした。キャスター付きの勉強用に置いてある椅子は、ギギッという音を鳴らしてハルの行動に異論を唱えていた。


「うん、夢だね」


どこか懐かしさを感じるような、それでいて遠い遠い昔のビデオを見ているような、そんな不思議な夢だった。


「この夢が終わったら、私はまた逢いに行く。か……」

「んー? なんか言ったか?」


ハルは椅子の異論に負けたのか、席を立って部屋を出て行こうとしているところだった。

ハルは大学生になってからまた背が伸びた気がする。まだまだ成長を見せるハルの姿を見つめながら、私はこう言った。


「ねぇ、もしさ。今こうしてるのも夢だったらどうする?」

「何だよそれ」

「もしもの話」


ハルは首を小さく傾げながら、再び私に向き合う形で部屋に戻って来た。


「お前、そういうの信じないってか考えないタチじゃないっけ?」

「うん、そうなんだけどさ、信じるか信じないかではなく、それが本当にあったとしたらーーそう考えるくらいはいいかと思って」


もしもこの世に生まれ変わりなんてものがあるとすれば、私はどんな未来を歩むのだろう。今もまだ未来に向かう途中にいるのにそんなこと考えるのは変だけど、私はなぜかそんな事を考えずにはいられなかった。