体力テストの最初は反復横跳び。これもまた苦手分野。跳んでる最中にリズムがよくわかんなくなってきて、足がもつれ始める。しかも一列で数人の子と跳ぶからか、余計にリズムがくるって集中できないし。

……結果、32回。去年というか、中学の頃から伸びてない気がする。


「カヨちゃんいくら跳べた?」

「聞かないで。平均点以下だってことは知ってるから。それよりことりちゃんは?」

「あたしは55回だったよー」

「すごっ! めっちゃ跳んだね!」


確か女子の平均って45回とかそれくらいだった気がするから、ことりちゃんはそれを10回分も上回ってる。


「どうやったらそんなに飛べるの?!」

「えへへー、反復横跳びは得意なのー」


私はことりちゃんを足元から頭の先までズズッと見やる。身長低いってことは足のリーチも短いってことで、それなのにみんなと同じ距離をこれだけ飛べるっていうのはどうやったらそうなるのかが心から疑問だ。


「そこの女子、反復横跳び終わったのなら次はこっちに来てシャトルランだぞー」


でた、私の中でのラスボス。他もまだ終わってないのに、もうラスボスのお出ましとかどうなのよ。


「うう、お腹痛くなってきたかも」

「ほらほらカヨちゃん一緒にやろうねー?」


ことりちゃんが私の腕をぎゅっと掴んで力一杯引っ張っていく。小柄なのになかなか力強いことりちゃんはどこからこんなパワーが来るのか。


「私まだ垂直跳びも前屈もやってないから……」

「あたしもまだだよー。ほら嫌なものはさっさと終わってしまった方が楽だってー」


私の腕を懸命に引く天使は、本当は悪魔の遣いなのかもしれない。