「だから俺はこうして来たんだろ。カヨを守るためにーー」

「私はもう終わりにしたいの」

「諦めんなよ!」


ケンがドンとテーブルを拳で叩いた。けど、私はその音にも負けじと叫んだ。


「私だって死にたい訳じゃないって、なんで分かってくんないの。でも多分もうダメなんだよ、ケンがタイムリープする度、私の体が悲鳴をあげてるの! ねぇ知ってる? 私がトラックで轢かれる瞬間を、何度経験したか。その度に痛みだって伴ってるんだよ!」


気がつけば、私は握り締めていた拳が石のように固くなっていた。ぎゅっと強く握り締めすぎていたせいで、手を開くと手のひらが真っ赤だ。

ケンは驚いたような、ショックを受けた顔で口を開いたまま、目が小さく震えるように揺れていた。


本当はこんなこと言いたくなかった。ケンはケンなりに懸命に助けようとしてくれている。それを知ってるだけにこんな話はしたくなかった。だけどそうでも言わないとケンはきっと諦めてはくれない。ううん、これを言ったところで諦めてくれるかどうかもまだ分からない。

タイムリープの装置を考えて作った? このケンが? 私の知る幼馴染のケンが?

それってどれだけの時間を費やして、どれだけ努力して、どれだけの失敗と挫折を味わったのか想像なんて私にはできない。

だけどケンはそれをやってのけて、ここにいる。それは並大抵の覚悟で挑んだことじゃないって事くらい、私にだって分かる。

だからこそーー。