私はベッドのそばに置いてあるスマホを手に取り、ケンに向けてテキストを手早く打った。画面を見るのも正直気持ち悪いけど、短い文章で済ませてそのままスマホをベッドに投げ置いた。

するとすぐに部屋をノックする音が聞こえて、ケンが私の名を呼んだ。


「カヨ、おい、大丈夫か」

「ケン、入って来ていいよ」


力なくそう言うと、部屋の扉は遠慮がちにゆっくりと開いた。その開いた向こう側からケンがそっと部屋の中を伺うようにのぞいている。


「学校休むってお前、大丈夫かよ。ちょっとやそっとの風邪くらいじゃ休んだりしないお前が休むなんて言うと思わなかったぞ」

「うん、休みたくないんだけどね……ちょっと吐きそうな感じだからさすがに今日は行くの諦める」

「顔色、悪いな。カヨママにはまだ言ってないよな? 俺言っといてやるよ」

「うん、ありがとう。ケンはどうするの?」


お前が休むんだったら俺も休むって言うかと思ったけれど、ケンはあっさりとした口調で想像とは反対意見を放った。


「今更だろ、もう来ちまったしカヨママの手前もあるから行くわ」

「そっか。分かった」


今日だけはケンが私にならって休むと言えばいいのに、って思った。実際過去のタイムリープでは、私が学校をサボろうとしたら一緒になってサボろうとしていたくらいなのに。

お母さんの前で猫を被ってるケンらしい回答といえば回答だけど。