「柊、なんとか言ってやって。カヨのやつ最近太ってきてるから見てらんねーって」

「私のことりちゃんに絡まないでくれる?」


私はことりちゃんを魔の手から庇うようにしてぎゅっと抱きしめた。すっぽりと私の手の中に納まることりちゃんはやっぱり可愛い。なんて実感している間も、ことりちゃんはホワホワとした表情で笑ってる。


「どーでもいいけど、お前、次の授業にまで遅刻する気かよ。柊も巻き添いになるからさっさと行けよ」

「はいはい、わかりましたよー」


確かにことりちゃんを巻き込むのは良くないな、ケンが遅刻するのは全然いいけど。なんて思いながら私は重い足を引きずるようにして、ことりちゃんと教室を後にした。


「本当にカヨちゃんと大久保くんって兄弟みたいに仲良いよね」

「腐れ縁ですからねー。出来の悪い弟ですよ」


いや、ケンの方が勉強できるわけだから、出来の良い弟ってことになるのか? でもその言葉はとても癪だ。性格の悪い弟って言う方が合ってるかもしれない。


「あははっ、でも大久保くんの方がカヨちゃんのお兄さんって感じするけどなぁ?」

「あーダメダメ。ことりちゃんはケンのこと何にも分かってない。あいつがどれだけ身勝手で、私がこれまでにその尻拭いをいくらしてきたか知らないからそんな事言えるんだよ」

「そうなの? 逆な気がするけどなぁ?」


ことりちゃんが首を傾げたとともに、私達は女子更衣室に着いた。


「違う違う、全然ちがーう。私はことりちゃんの将来が心配になってきたよ。このままだと将来変な壺とか売りつけられちゃうタイプだと思うから気をつけてね」


まだことりちゃんが首を傾けている中、私は更衣室の扉を開けて、サクサクと中に入っていった。