「ねぇケン、本当に今までの話、信じてくれてるの?」


私は公園を出た後、無言でいるケンに向かってそう聞いた。今のケンの表情からは感情がとても読みにくい。

普段から読み取りにくいポーカーフェイスな奴だけど、幼馴染としてケンの癖や性格は知ってるつもりだ。だから周りが理解しにくいケンの考えてる事は結構わかるつもりだけど、今はそれを読み取るのがなかなか難しかった。


「ああ。完全に信じ切ってるかって言われたら嘘になるけどな。もしお前があいつと結託して口裏合わせてたら話は別だけど」

「そんなことするわけないじゃん」


こんな大層で大掛かりな嘘つくわけがない。しかもあの人がケンじゃないとすると、あんな大人とそんな子供騙しな嘘をケンにわざわざつく意味もわからないし。


「分かってる、だから信じてるって。お前があいつと結託して俺を騙そうとしてるなんて考える方が非論理的だろ」


そう言いながらもケンは相変わらず読み取れないポーカーフェイスを崩さないでいた。


公園を出て小道を数分歩いた一本道。そこを抜けた後、道路沿いの歩道を数歩歩いた後の角を曲がれば、今朝の横断歩道に突き当たる。私達はその横断歩道で信号が青に変わるのを静かに待った。さっきまで仕事や学校に行き交う人がいた交差点で、今はもうほとんど人がいない。

私はスマホをポケットに入れっぱなしで今朝から開いてもいなかった事に気付いて、信号待ちの間に電源を入れた。

時刻はすでに学校が始まっている時間だった。その時間のすぐ真下にメッセージのポップアップが浮かび上がっていた。


“カヨちゃん遅刻なのー?”


そんなメッセージをくれていたのは、ことりちゃんだ。