「分かった。俺は学校に行ってカヨは俺の家にいればいい。けど、学校に行くのはカヨを家に送ってからだ」

「カヨは俺が家まで送る。家の鍵はカヨ、お前持ってるだろ?」

「え、うん」


ケンと私は家族のような間柄だから、お互いの両親が私とケンそれぞれにぞれぞれの鍵を持たせてくれている。いつでも家に入ってこれるように、って。

特にこれは、うちのお母さんがいつも両親が不在のことが多いケンの事を心配して、うちの鍵を持たせたのが始まりだけど。


「いや、ダメだ。カヨは俺が家まで送り届ける」


現在のケンは私の前に立って、未来のケンと向き合った。


「いやいや、ケンは学校に早く行ってよ。ことりちゃんが怪我するかもしれないからそれをーー」

「俺は前回の事を知らないんだぞ。柊が怪我をするって保証もないし、そもそも話は分かったけど、俺はこのおっさんを信用しきったわけじゃない」


その言葉に、未来のケンの眉がピクリと反応した。


「だからお前がおっさんって言うな。お前に言われるとなんかなんとも言えない気分になる」

「とにかく俺はお前を信用してねーんだよ。今までだって何度も失敗したからループしてるんだろ? ならカヨを家まで送り届けるまで安心できないからな」


淡白な表情で、鋭い視線を未来のケンに送る、現在のケン。私が口を開こうとしたその時、未来のケンがため息をつくように、こう言った。


「分かった。俺が今のお前だったらきっとそう言うだろうって思ってたしな」