「未来は変わろうとしている」


未来のケンはそう言った。だけど私は腑に落ちない、というかそれがいい事なのか、いい方向になのかというところで胸に引っかかっている。

私はスニーカーに視線を落とし、前回のことを振り返った。スニーカーをやめてローファーにすれば靴紐が切れる事はない。そう思ったのに、靴底が剥がれて、結局転ぶ事になる。

今回は靴紐の替えを持って、警戒しながら歩いていたにも関わらず、靴紐は一足だけじゃなく二足とも切れて、また私は転びそうになった。

どの道を選んでも行く未来は決して……。

そう思ったところで、現在のケンが口を開いた。


「で、今回はどういう風に考えてるんだ? 何か策があってもう一度やり直してるんだろ」


未来のケンはゆっくりと頷いた。


「前回まで俺もカヨが同じようにタイムリープを繰り返しているとは思っていなかった。けど、カヨの様子を見て変に思ったんだ。もし俺が、カヨに接触する事でカヨにも何か変化が起きてるとすれば……って」


未来のケンは現在のケンから視線をゆっくりとスライドさせて、私と目を合わせた。


「カヨがもう起きてることを認識して理解してくれてるのなら話が早いし、俺も動きやすい。だから今回はもうカヨ、このまま俺のうちで一日中大人しくしていてくれ」

「でもそれじゃ、ことりちゃんは?」


私はそっちの方も心配だ。私の代わりに事故にあうなんてまっぴらだ。


「大丈夫だ。俺……現在の俺が学校に行って、柊が怪我をするのを防げるなら防いで、それが無理でも家まで帰りはちゃんと送り届ける」

「でも、他に誰かが被害に遭ったら……?」

「カヨ、考えすぎるな。俺はベストを尽くすし、他にも考えがある。だからお前は安心して家でおとなしくしていてくれ」


未来のケンは現在のケンに目配せをして、現在のケンが頭を少し掻いてから、今聞いた流れを承諾した。