「ことりちゃんがトラックに轢かれた時も、ケンは私を突き放したよね? あれもやっぱり自転車との接触を避けようとしてくれての事だったって事?」

「ああ、俺はもうカヨが自転車と接触して死んだ姿を見てるからな。そうならないようにするつもりだったけど、助けるのに間に合わなくて突き放したんだ。そしたら結果、今度は柊がトラックに轢かれて死んだんだ。だから俺はまた時間を飛んだ」

「カヨを助けようと動けば動くほど、起こる結果が変わる……」


現在のケンはいつものぶっきらぼうな表情をしたまま、そう呟いた。その声を未来のケンは拾い上げた。


「ああ、それは間違いない。それにその靴紐もその一つだ」


未来のケンはゴツゴツとした長い人差し指をツンと私のスニーカーに向けた。


「俺の記憶上、カヨが靴紐を切れたのは俺がタイムリープをした2回目からだ」


私も未来のケンにならうようにして、自分の足元に視線を落とした。真新しい靴紐を見つめながら私は、完全にどうしたらいいのかが分からなくなっていた。

ケンは私を救おうと必死になってくれている。だけど、そうすると他に歪みが起こり始める。お母さんやことりちゃんが死ぬ事になったのがその例だ。