「ほらほらカヨちゃん、いつまでもふてくされてないで着替えに行くよー」


HRの終わりのチャイムが鳴るとともに、クラスメイトのことりちゃんが体操着が入ったカバンを肩に下げながら私の肩を揺らした。


「ことりちゃん、私にあなたの運動能力を分けておくれ」

「あはっ、できるなら分けてあげたいけど、それは無理かなー」


ことりちゃんのヘラっとした笑顔を見ても今の私は癒されない。ことりちゃんは背も低いし、綿菓子みたいなホワホワとした可愛らしい雰囲気を持つ可愛い系女子なのに、運動能力がかなり高い。

どう考えても見た目的にいえば私の方が運動できて、ことりちゃんは運動音痴系女子。それなのに、どうしてこの世の中とはマンガのテンプレのようにいかないものなのか。


「ほら早く着替えに行こうよ。男子が着替えられないでしょ」


ことりちゃんはそういうけど、男子は私達女子にお構いなくどんどん着替えはじめている。


「えー、私体調悪いから体力テスト見学したいよー」


そういって机に突っ伏そうとしたら、背後からケンの声とともに何かで頭を叩かれる音がした。


「バーカ、つまんねー駄々こねてないでさっさと着替えに行けよ」

「誰がバカだって?」

「お前だよバーカ。体力テストなんざ結果さえ気にしなけりゃいいだろ。どーせちょっと内申点に反映される程度のことで、進級に関わるわけでもないし」

「結果は気にするでしょ、数値に出るんだからさ。たとえ気にしなかったとしてもやるのがしんどいじゃん」


結果はわかっていたとしてもやるならつい頑張ろうとか思うじゃん。でも結果、数値は伸びてないし、シャトルランやってる時はもうしんどすぎて泣きたくなるし。

だったらはじめからしたくないって思うのが道理じゃん。