俊は気まずそうに俺を見ていた。

その視線に俺は気がつかないふりをして、自分の席に戻る。


「おいおい! 俺にも教えてくれよ!」

「だから、本当に何でもないんだって!」

「そこを何とか!」


後ろから困り果てる俊の声が聞こえる。

ちょうど吉川さんは席を外したみたいで、あの二人の声が聞こえずに済んでよかった。

優しい大和は、あの日の事を知らない方がいい。

知ったら大和は、俺の事を軽蔑するだろう。


「うるせー……」


俺はそのまま机に伏せて、時間が過ぎるのをただひたすらに待ち続けた。