教室に戻ると彼女の周りはすぐに女子で囲まれた。

男子も遠目から吉川さんのこと見ているようで、その様子を俺は教室の後ろで気づかれないように見ていた。


「吉川春奈って言うんだなー」

「大和、知らないっけ?」

「知らないって何。お前知ってんの?」

「あ、あの時いなかったのか……」



俊がやばい、という顔をする。

それを見逃さないぞと言わんばかりに、鋭い蛇のような目つきで食いつく大和。


「あの時って?」

「いや……何でもない。。俺は吉川と同じ中学だからさ」


俊が言った“あの時”とはファミレスの日のことだ。


「気になんだけど」

「いいから。知らなくても生きてける」

「何だよそれ~工藤も知りたいよな!?」

「……別に」


むしろ、俺は知りすぎてるぐらいだ。

あの日の出来事は俺が原因なんだから。