俺の名前を聞いて満足でもしたのか、彼女たちは俺のため息を聞く前に自分たちの席に戻っていった。


「いいですねえ~、入学式からモテモテで」


そんな三人と入れ違いでやってきたのは、中学時代からの友達、中川大和だ。


「おはよ」

「そのモテ度を俺にも分けてくれよ」

「うるせ」


俊と似たようなことを言う大和を小突く。


「いい加減彼女作ったら? そうすればお前のこと好きな子たちも諦めがつくと思うぜ?」

「お前……!」


大和は知らないからしょうがないけれど、吉川さんが近くにいる俺からしたらその話はなるべく触れてほしくなかった。


俺は横を向くことは出来ず、すぐさま話を変えようと口を開くと。


「春奈ー!」


彼女の名前を呼ぶ声と重なった。


春奈と呼ばれた彼女――――吉川さんは、ゆっくりと立ち上がり、呼ばれた教室のドアの方へ歩き出した。


「……あの子、可愛いよなー」

「……興味ないわ」