席に着いた俺は、いつ声をかけるか考えていた。


今かけたところで無視される可能性だってあるし、何より入学式を控えているクラスでは、まだ人間関係が出来上がっていないから変に目立つ可能性がある。


(となると、入学式が終わって人気がなくなった時に声をかけるしかないか……)

でも、なんて声をかけようか……と、頭の中でいくつもシミュレーションを立てていると。


「ねえねえ」


その声は、先程教室に入ってきた時に聞こえてきたものと同じだった。


無視するわけにもいかず、視線を上げた。


そこには俺を囲むように立つ三人の女子の姿が。入学式にもかかわらず化粧をバッチリとほどこし、ブラウスの第一ボタンを開けて、ネクタイを緩めている。


「名前なんていうの?」

「……高橋」

「じゃなくて、下の名前!」

「……海斗」

「海斗君ね! よろしくね!」



馴れ馴れしい態度に、俺は分かりやすく大きなため息をついた。