綺麗な校舎の階段を四階まで俊と歩く。


早く吉川さんに会いたいという想いから、少しだけ早足になるけれど、あの日のことを思い出すたびに、その足は錘でも引っ張っているかのように重くなる。


そして自分のクラスのプレートが書かれた教室のドアの前に立つ。


俺は小さく深呼吸をして、ドアを開いた。



「……」


ザワザワと賑わう声。

その声はやむことはないが、教室のドアに向けられるいくつもの視線。


どんな人がクラスメイトなのか、まるで品定めするかのような視線に気が付かないふりをして、黒板に書かれた座席表を確認する。



「カッコイイね」

「うんうん。あとで話しかけてみよ」


そんな声が教室の隅から聞こえ、俺は一切視線を送らずに自分の席を確かめた。


「……」



そして次に確かめたのは、彼女の名前がどこにあるか。

案の定彼女の席は、教室の廊下側、一番後ろだった。