「嘘だろ……」
吉川春奈、と書かれた名前を、そっと人差し指でなぞった。
確かにそこに書かれている名前に、俺は動揺を隠せなかった。
……彼女も、この高校を受験し、合格したんだ。
そう思うと自分勝手ながら安心している俺がいた。
彼女はまだ手の届く場所にいる。
「高橋、お前気まずくないの?」
気まずい気持ちもあったが、そんなことよりも彼女がこの高校にいてくれたことの嬉しさの方が強かった。
「とにかく、あの日のことは早く謝る」
そうすれば彼女は前と同じように接してくれる。
――――この時は、そう思っていたんだ。