――懐かしい夢を見た。
幼い頃に結んだ約束と、大好きだった友達と過ごした、かけがえのない時間の夢だ。
あの約束から、そろそろ十年。
今では当時のみんなが、どこでどんな生活を送っているのかすら、私は知らない。
『約束な!』
わずかに耳に残っているのは、夢の中でロクが言った、そんな言葉だ。
あの頃の私は、約束は、結べば必ず果たされるものだと信じていた。
だけど今の私は、約束は、必ず果たされるものではないと知っている。
「あー……早くしないと、また遅刻する」
くしゃりと髪をかき上げて、ゆっくりと立ち上がる。
私が今でも住んでいる花ヶ咲団地(はながさきだんち)には、あの頃一緒にいた四人はもう、誰ひとりとして住んではいなかった。