「それじゃあ、埋めるぞ」
ガポン、という独特な音を立てて閉じた缶箱を、ロクが掘ったばかりの穴に収める。
缶箱の蓋にはロクの汚い字で、【はながさきだんち ゆうじょうのタイムカプセル】と書かれていた。
「……なんだか、ドキドキするね」
私がぽつりとつぶやくと、隣のニーナが「そうだねぇ」と頬を染める。
「えーと、今、俺たちが七歳だから、掘り起こす時には……」
「十七歳だろ。多分、高校二年生とかになってる」
もたもたと指で数を数えるミツムネを、シローが冷静に諭した。
「十年後! 掘り起こす時に、この場所を忘れないように、俺がタイムカプセルの地図を持っておく!」
堂々と胸を張ったロクを前に、みんなで「ロクは地図、失くしそう」と笑い合った。
キラキラキラ、見えるものすべてが輝いている。
疑うこともまだ知らず、目の前にあるものがすべてだった、あの頃。
「うるせー! とにかく、十年後! またここで、みんなで集まるぞ! 約束な!」
──約束。
あの頃の私は、約束は、結べば必ず果たされるものだと信じていた。
信じていたというより、当然、やってくる未来だと疑わなかったのだ。