「なんで? 別にいいじゃん。花ヶ咲高校の校門で待ってれば、ニーナにも会えるかもしれないし」


「仮にイチコの言うとおり、ニーナに拒否されても、俺は毎日だって通うよ」なんて続けたロクは、冗談を言っているようには思えない。


「絶対やめてよね!! そんなことされたら、ホントにホントに迷惑だから!」

「迷惑って言われてもなぁ。勝手にやってって言ったのはイチコだろ? それにイチコが協力してくれない以上、それしか方法がないし。まさか、他校生の俺が花ヶ咲高校の中に入ってニーナを捕まえるわけにもいかないし……って、まぁでも、それも最終手段のひとつにしてもいいけどさ」


面白そうに笑ったロクの、昔のヤンチャぶりを知っている以上、やりかねないと思ってしまった。

ああ……もう。今日は、とことんツイてない。

こんな変なことに巻き込まれるだなんて、まさか思ってもみなかった。


「…………わかったから」

「うん?」


脱力しながらつぶやけば、わざとらしく聞き返されて苛立ちが増した。


「なんて?」

「だからっ、協力すればいいんでしょ! 私がどうにかして放課後、ニーナを呼び出す。それで学校の近くの公園とかで待ち合わせをして、ロクがニーナにタイムカプセルの中身を渡せばいい」


もう、こうなったらヤケクソだ。

せめてもの抵抗で視線を逸らすと、ロクは今の今まで掴んでいた私の腕をようやく解放してくれた。