──いた! ニーナだ!


十年前とは違って、明るい栗色に染められた髪。

スラリと伸びた手足は大人っぽくて、校則違反の大きめのセーターが、なんだかとても似合っていた。

だけど間違いなくニーナだ。メイクもしているようだったけれど、綺麗な顔立ちは変わらない。


『ニーナっ!』


けれど、名前を呼んでから、後悔した。

ニーナは一瞬だけハッとしたように顔を上げ、教室のドアの前に立つ私へと視線を向けると驚いたように目を見開いた。


『……っ』


視線と視線が交差する。

そのままニーナはすぐに私から目を逸らすと、派手な女の子たちの輪の中へと入っていった。


『ニーナ……?』


その後は一度も、私に目を向けることもなかった。

私がニーナに気づいたように、ニーナも間違いなく私に気がついたはずだ。

そう感じたのは、私たちが幼馴染だからこそなのかもしれない。

それなのに……なんで? 気づいたのに、どうして私を無視するの?

もしかしてニーナは、もう私とは話すこともないと思っているのだろうか。

それとも本当に、私のことなんかすっかり忘れてしまったのか……。

どちらにせよ、ひとりで浮かれていた自分が恥ずかしくてたまらなかった。

ニーナが一緒にいたのは、今のニーナと同じ、派手な格好をした女の子たちだ。

かくいう私は、見た目は普通女子。

派手でもなければ地味でもない。

スカートの長さも短過ぎず、長過ぎず。校則違反のセーターも着たいけれど勇気の出ない……中途半端な女子だった。