「どうしても、ダメか? ただ、届けたいだけなんだ。……過去には戻れなくても、俺は大切な思い出を、埋もれた過去にはしたくない」


ロクの言葉は私の心を大きく揺らす。

【はながさきだんち ゆうじょうのタイムカプセル】

ここで過ごしたあの日々は、私にとっても心の中で輝いている大切な思い出だ。

だけど、そう思っているのは私とロクだけかもしれない。

他の三人はとっくに、私達のこともタイムカプセルのことも、忘れてしまっているかもしれない。

そう思うと胸が痛んで、臆病になった。

私たちだけが一方的に大切に思っているなんて、そんなの虚しいだけじゃない。

あの頃の私たちと、今の私たちは違うんだ。

それぞれ別の道を歩んで、今はもう、みんなとの関わりはない。

──大切な思い出を、埋もれた過去にはしたくない。

だけど、もしもみんなが同じように思っていてくれたら……なんて、ロクの言葉に淡い期待を抱いてしまったのも事実だった。

あの頃のように、みんなで無邪気に笑い合えたら、どんなに毎日が楽しくなるだろう。

くだらない話に花を咲かせているうちに、いつの間にか日が暮れている。

『またね』と笑顔で手を振って、明日が来るのを待ち遠しく思うんだ。


「……っ」


けれど、そんなことを考えていた私の脳裏を過ったのは、あからさまに逸らされた視線だった。

まるで別人のようになった容姿と、昔のことなんてとっくに忘れたと言いたげな――〝彼女〟の冷たい態度だ。