「遅いぞ、イチコ!」
「──ロク! ニーナ、ミツムネ、シロー! 遅れてごめんね。宝物を作るのに、時間がかかっちゃって……」
額ににじんだ汗をぬぐうことも忘れて謝ると、先ほど大声で私を呼んだロクが、「イチコはいつも、準備が遅いんだよな」と毒づいた。
「ロクってば、イチコがなかなか来ないから、ずっと心配してたくせに」
「そ、そんなことねーよっ。イチコが来なかったらコイツ抜きで、タイムカプセル埋めちまおうと思ってたし!」
「はいはい」
からかい口調になったニーナを、ロクが牽制する。
それをミツムネがニコニコしながら見つめていて、シローはどこか上の空で大きな木を見上げていた。
「もういいから、早く始めようぜ!」
真っ赤な顔をごまかすように声を荒らげたロクが、抱えていた銀色の缶箱を私たちの前へと差し出した。
時々おばあちゃんが家に持ってくる、お煎餅がたくさん入っている缶箱と同じくらいの大きさだ。
私たちはロクの指示どおりその中に、各々が持ってきた宝物と手紙を入れると、ドキドキしながら木の根元近くの土を掘った。