「あ、あの、これ、もしかしてロクの……」
「俺のじゃないよ」
間髪入れずに応えたロクを前に、反射的に肩が揺れる。
一瞬ロクの表情が曇ったからロクのものなのかと思ったけれど、違うらしい。
それじゃあ、この壊れた腕時計はいったい、誰の宝物?
「わ、私……」
言いかけて、言葉に詰まる。
腕時計が誰のものであろうと、本当に私のせいで壊れたのなら、しっかりと相手に謝らなければならない。
この中に入っていたのなら、〝宝物〟なのだ。
そう思ったら、心が鉛のように重くなった。
本当に、なんでこんな思いをしなきゃいけないんだろう。やっぱり今日の私は、ツイてない。
そもそもロクは、どうしてひとりでタイムカプセルを掘り起こそうと思ったのだろう。
ロクならみんなで掘り起こす約束を守りそうなのに、ひとりで掘り起こしてまでなにがしたかったのか、さっぱりわからない。
「……俺、このタイムカプセルの中身を、みんなに届けたいんだ」
「え……?」
けれど、そんな私の疑問を見透かしたように、壊れた腕時計を手のひらにのせたまま、ロクが静かに口を開いた。
「だって、約束しただろ。このまま、見て見ぬふりなんかできない。なかったことになんて、できなかった。俺は過去のみんなの思いを、今のみんなに届けたい」
顔を上げたロクの目はやっぱり真っ直ぐで、少しの迷いも感じられなかった。
迫力に気圧されて、反射的にゴクリと息を呑むと胸の前で強く拳を握り締める。



