「どうせ、他のみんなだってもう、このタイムカプセルのことなんか忘れてる。だから、これはまた、元の場所に埋めようよ」


鼻で笑って、私はタイムカプセルから目を背けた。


「もう、ただのゴミみたいなものだし、十年前の手紙なんて、どうせくだらないことしか書いてないんだから──」

「ゴミなわけ、ないだろ」


突然、強い口調で放たれたロクの言葉が、私の声を遮った。

顔を上げると真っ直ぐに見つめる視線に射抜かれて、思わずゴクリと喉が鳴る。


「ロク……?」

「冗談でも、ゴミみたいなものだとか言うなよ。くだらないことしか書いてない? そんなの、なんで勝手に決めつけるんだ」


蓋を閉めようとした私の手首を、ロクの大きな手が掴んだ。

ロクの目は真剣で、視線を逸らすことも叶わない。

責めるような、戒めるような瞳だ。

今すぐここから逃げ出したい衝動に駆られたけれど、手首を掴まれているせいで、それも叶わない。