「ダメ……っ!!」

「わ……っ」


突然のことに、ロクが驚いたように声を漏らす。

ロクがタイミングよく手を離してくれたおかげで、手紙は破れることなく十年ぶりに、私の手の中に返ってきた。


「イチコ……?」

「……っ」


だけど力いっぱい握り締めたせいで、グシャリと潰れてしまった。

私を不思議そうに見ていたロクの眉間にもシワが寄り、それが余計に胸を騒がせる。


「わ……私の手紙なんて、どうでもいいから! こんなの、読む価値もないし! っていうか、もう、こんなの、この中に入れとこう!」


風で流れた髪を耳にかけ、捲し立てるように言った私は再び缶箱の中に自分の手紙を押し込んだ。

ドクドクと不穏な音を立て続ける心臓。こんなもの、今更読んで、どうなるというのだろう。