「すごいよな……」


ぽつりとつぶやいたロクは、一枚の封筒を手に取った。

見ればそこには【かわい にいな】というかわいらしい文字が書かれていて、十年前、私たちと同じくこの団地に住んでいたニーナの手紙だとすぐにわかる。


「これは、ニーナのか。そしたらこっちは……ミツムネと、シローだ」


懐かしい、三人の名前が耳に触れた瞬間、胸がざわめいた。

今はもう、話すこともなくなってしまった幼馴染たち。

毎日のようにここで泥んこになって遊び回って、こんなふうにタイムカプセルまで埋めたのに、今はみんながどこに住んでなにをしているのかも、わからない。


「イチコの手紙は……あ、これだろ」


そんなことを考えていると、ロクが私の手紙を手に取った。

【かつうら いちこ】

けれど、その文字を目にした瞬間、心臓が大げさに高鳴って、私はロクの手から引っ手繰るように、手紙を奪い取った。