「……懐かしいね」


初夏の生ぬるい風が、私たちの髪を静かに揺らした。

ぽつりとこぼした私の言葉に、ロクがうなずいてくれることはない。


「……開けようか」


そう言ったのはロクで、私は「うん」と小さくうなずいた。

ゆっくりと伸びてきた、ロクの手。

あの頃とは比べものにならないくらい大きくなった手は骨ばっていて、そこには私の知らないロクがいた。


「……っ」


ガコンッ!と、鈍い音を立てて開けられた蓋は、年月と土の重みでほんの少し歪んでいた。

けれどそれを難なく開けたロクは、蓋を缶箱の横に静かに置く。


「わ……」


十年ぶりに開いた、タイムカプセル。

外側と違い、中は錆びもついておらず、綺麗なままだった。

まるで、この中だけ時間が止まっていたみたいに、十年前、私たち五人が手紙と宝物を収めた時のまま、ほとんど変わらずに残っていた。