「イチコ?」

「……っ」


鼻の奥がツンと痛むのは、ロクと十年ぶりに会えて、懐かしさで胸がいっぱいになったせいだ。

うつむいてしまった私の顔を不思議そうにのぞき込むロクを前に、気恥ずかしくなった私は、キュッと唇を噛み締める。


「どうかした?」

「……ううん、なんでもない。それより、その中身、ロクはもう確認したの?」


込み上げてくる涙をごまかすように、足元を指差した。

私たちの間に置かれたタイムカプセル。

赤く錆びついた缶箱は、開けるだけでも大変そうだ。


「ああ……うん。一応、開くかどうか確かめるために開けてはみたけど、みんなの手紙とかは読んでないよ」

「え〜? ホントに?」

冗談交じりにチラリと見てみると、ロクは顔をほんのりと赤く染めながら「絶対、見てないから!」と否定した。