『一〇五ごうしつ、かつうら いちこ』
十年後に見ても、汚い字だ。
紙は年月のせいで少し黄みがかっているけれど、黒のマジックペンで書いてくれたおかげか、今でもちゃんと読むことができた。
「……ホントに。ホントに、ロクなんだね」
「……まだ疑ってたの?」
思わず私がつぶやくと、ロクは再び呆れたように小さく笑った。
その笑い方も、記憶の中のロクとは違う。
あの頃のロクは、いつでも大きく口を開けてお腹の底から声を出して笑っていた。
だけど、この地図を持っていることが、彼がロクであるなによりの証拠だ。
『十年後! 掘り起こす時に、この場所を忘れないように、俺がタイムカプセルの地図を持っておく!』
昔からロクは、ヤンチャな悪ガキではあったけれど、友達との約束だけはきちんと守る、心根の優しい男の子だった。



