「でも……急に、どうして?」


驚きと困惑を隠せないまま尋ねれば、ロクは私の手から生徒手帳を奪って胸ポケットへと滑らせた。

そしてチラリとタイムカプセルへと視線を向けると、今度は徐(おもむろ)にそれを地面に下ろして息を吐く。


「タイムカプセルの中身を届けに来たんだ。本当は、五人で掘り起こす約束だったけど……。もう、誰の連絡先もわからなかったし、全員で集まるのが無理なら、ひとりで掘り起こしても同じかと思って」

「ああ、うん……」

「それで、掘り起こした後で、なんだか無性(むしょう)に懐かしくなって……。結局、この〝タイムカプセルの地図〟に書かれてたメンバーの部屋番号を、一軒一軒、確認することにしたんだ。そしたらイチコの一〇五号室だけは、表札が〝勝浦〟だったから、もしかして、まだここに住んでるんじゃないかと思って……」


言いながらロクが制服のポケットから取り出したのは、あの日、ロクが描いた『タイムカプセルの地図』だった。

よく見るとそれにはメンバー全員のフルネームと、当時住んでいた部屋の番号が、七歳だったロクの字で書かれている。