あの、いつも人のことをからかって遊んでいたロクが?
小学校の下校途中でランドセルの中身を出して、代わりに釣り上げたザリガニを入れて帰るような男の子だったのに?
「……ほら。これで信じる?」
私が未だに疑いの目で見ていることに気がついたのだろう。
そう言った彼が胸ポケットから取り出したのは、顔写真付きの生徒手帳だった。
恐る恐る受け取って中身を見れば確かに、『坂本 禄』という名前と、今目の前にいる彼とソックリの顔写真が貼られている。
「な。本人だろ?」
顎を持ち上げて言うその仕草が、遠い日の記憶の中のロクと重なった。
──ロク。まさか、本当に?
本当に、本物のロクみたいだ。
確か、小学三年生の始めにロクが引っ越していって以来だから、何年ぶりだろう。
あの頃は両手で抱えていた缶箱を、今は軽々と脇に抱え込んでいる。
手だって私よりも大きいし。脚も……なんだか無駄に長くなっている。